7月20日から8月20日まで、一ヶ月にわたってオーストラリアとニュージーランドで共同開催された女子サッカーのワールドカップ2023大会。連日熱戦が繰り広げられ、数々の名プレーが見られましたが、スペインの初優勝で幕を閉じました。今大会では強豪国・ドイツが1次リーグで敗退、優勝候補だったアメリカも決勝トーナメントで敗れるなど、波乱続きの展開となりました。その一方で初出場国が勝ち進むなど、女子サッカー界における新しい風を感じさせる場面も多く見られました。
最近ではインターネット技術の進歩に伴い、こうした海外での試合も日本にいながらリアルタイムで観戦できるようになりましたが、ブックメーカーでベットしながら楽しむファンも増えていると言われています。ここでは、我らが『なでしこジャパン』の大躍進や各国の選手たちの活躍とともに、今大会を振り返ってみたいと思います。
女王の早すぎる敗退
今大会でも開幕前から第一優勝候補として注目されていたアメリカ。オリンピックでは史上最多の4回の金メダル獲得、女子ワールドカップでも史上最多となる4回の優勝を飾るなど、輝かしい記録を残してきました。FIFAランキングにおいても長く1位の地位を守り、『女子サッカー界の女王』とまで称される最強国です。今大会でも史上初となる大会3連覇を狙っていましたが、6日の対スウェーデン戦で、PK戦の末、まさかの決勝トーナメント敗退となってしまいました。敗因としては、ヴラトコ・アンドノフスキ監督の戦略ミスや、主要選手にケガが相次いだこと、ベテラン選手に頼り過ぎたことなどが指摘されていますが、実は女子ワールドカップにおいてアメリカが3位以内に入れなかったのは、これが初めてのこと。これほどまでに早く、アメリカがワールドカップの舞台から姿を消したのは記録的悪成績とも言えるのかもしれません。
なでしこ達の大活躍
2011年大会では、アメリカを下して初優勝に輝いた『なでしこジャパン』。その後は主力選手の引退などでなかなか成績を残せず、現在はFIFAランキング11位にとどまっていました。しかし、今大会出場において主要メンバーの世代交代をはじめ、各選手の強化を行うなど切磋琢磨を繰り返し、才能ある選手を取り揃えて3大会ぶり2度目の優勝をめざして大奮闘を見せてくれました。グループステージでは優勝国となったスペインにも圧勝するなど白星を重ね、グループ首位で決勝トーナメントに進出。決勝トーナメントの1回戦では強豪国であるノルウェーを3-1で下し、二大会ぶりにベスト8に名を連ねることとなりました。残念ながら、続くスウェーデン戦で敗退することとなってしまいましたが、「今大会で最も団結しているチーム」と絶賛されたように、3人のFWと2人ウイングバックという実質5人のアタッカー達により繰り広げられる巧妙で連携の取れたプレイスタイルとともに、改めて世界に日本の女子サッカーの強さを見せつけてくれました。さらに、全試合通して合計5ゴールを決めた宮沢ひなた選手が今大会の得点王に輝くなど、これからもさらなる活躍が期待されます。
新女王・スペイン
こうして激戦の末にベスト4へ勝ち進んだのは、イングランド、スペイン、スウェーデン、オーストラリア。いずれも女子サッカーの国際ランキングで上位にいる強豪国ばかりでしたが、実はこの4ヶ国とも、女子ワールドカップでは優勝経験がありませんでした。そして最終的に、決勝戦において1-0でイングランドを制したスペインが女子サッカー界の新女王として優勝杯を手にすることとなりました。男子チームも2010年W杯で優勝しているスペインは、ドイツに続いて、男女共にワールドカップを制した2つめのチームとなりました。
大躍進の初出場国
今大会では、これまで弱小国と思われていたチームが強豪国を下すという展開が幾度か見られましたが、その中でも最も注目されたのが北アフリカの国・モロッコではないでしょうか。モロッコといえば、2022年に開催された男子サッカーのワールドカップで初めてベスト4入りを果たすなど、近年、急速に実力をつけてきているチームという印象がありますが、今回、女子サッカーにおいても活躍ぶりを見せています。ワールドカップ初出場ながら、グループリーグでは日本と並ぶアジアの強豪国・韓国を1-0で破って初勝利を上げると、その後の対コロンビア戦にも勝利し、初出場にして決勝トーナメント進出という快挙を果たしました。